あぼぼーぼ・ぼーぼぼ

のんびり生きたい

『システム運用アンチパターン』を読んだ

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◯◯アンチパターン本としては『SQLアンチパターン』が思い浮かぶのですが、「システム運用」って結構広いので何が書かれているかわくわくしながら読みました。

広いだけあって、章ごとに結構毛色が変わっていて且つ基本的に独立してるので、1日2章読むみたいに決めて読んでいきました。章ごとに面白くてあっと言う間に読み終わった章、興味が薄いのでサーっと読み進めた章、活かせそうな考え方が多くてメモを取りながらじっくり読んだ章と様々でした。

3章「盲目状態での運用」では、運用の可視化をするうえでプロダクトを理解していないと価値のないメトリクスが集まったダッシュボードができあがったり、文脈のないログが溢れたりするアンチパターンを知ったり。

7章「空の道具箱」では、自動化の取り組みを行う際の主な領域として待ち時間・実行時間・実行頻度・実行のばらつき、の4つが紹介されていました。自分の業務の中から手動でやっている作業を棚卸しして、この4つの観点で考えてみるのは面白そうです。普段漠然と行っていた手動作業に一定の評価観点が追加され、「今自動化し(て)ない理由」が本当に合理的かどうかの判断を助け、自動化を進められる気がします。また、ケネビンフレームワークなどを活用してタスクの複雑さを分類して理解するといったアプローチが紹介されていて、実際に自動化は進めたいがどう優先度を付けていいか分からないとか、タスクの安全性をどの程度担保したらいいか不安だ、といった際に活用できそうです。

10章「情報のため込み:ブレントだけが知っている」では、「意図せず」情報を溜め込んでいる人が組織によって形成されること、ドキュメントを大切に思ってはいるが大切にしていないこと、など耳が痛い話が続きます。ゲートキーパーは聞けば教えてくれるので、良心があり、その行動を評価しがちですが、「その情報を手に入れるために、あなたのチームが提供できるほかの方法はありますか?」と問いを立ててみると前に進めそうです。

11章「命じられた文化」では文化チーフという概念が登場します。

文化チーフとは、組織の文化的価値観を体現する社員のことです。組織の中での階層にかかわらず、会社の中で影響力のある人物とみなされます。チームやグループの感情面でのリーダーとみなされることもあります。 p272

なんだかすごそうな人に見えますが、この観点から組織を見たり自分を見たりするのは良い内省のきっかけになると思います。12章「多すぎる尺度」では優先順位の文脈から目標設定や目標達成のための話も出てくるため、例えば自分の過去半年を振り返って「チームの目標達成を至上命題とする文化チーフとして振る舞えていただろうか」と考えたりするのは効果的でしょう。自分はマネージャーではないですが、マネージャーでなくともチームに関わる話として読み進めると発見があります。

というわけで、章ごとにテーマがほぼ独立していて全体をまとめるのが難しい本ですが、DevOpsの観点から組織や自分の仕事を見つめ直すきっかけに溢れた本だと思いました。